八代南部、金剛地区。
この辺りは天保年間、1840年頃の干拓により、広大な農作地が広がっています。
その中ほどに天津さんの作業場があります。
天津さんは作業場前の休憩所で、もてなしてくださいました。
畳表の最高褒賞を受賞し、各賞を総なめにしている
天津さんのお話は興味深いものばかりで、
時間の経つのを忘れ話し込んでしまいました。
『い草(畳表)は自分の娘。』
手塩にかけて、大変な苦労をして育てた娘(い草)を
お化粧して(天然染土で泥染めして)お嫁に出している。
いつもそんな気持ちでい草を送り出している。
『今年のい草はどう料理しよう、‥もう頭の中にある。』
料理するとは、
刈り取り、泥染め、乾燥 のタイミングや時間、温度調整のこと。
どの様に一連の行程を踏んでいくのか。
永年、い草と向き合ってきた時間と経験からの言葉。
い草の状態によって、最適な調理法で料理する。
同一ではなく、僅かな調整をどうするか、天津さんにだけ見えている。
刈り取った い草は天然の染土で泥染めして乾燥の工程に入ります。
泥染めすることで、い草の鮮やかな緑の基である、葉緑素が守られ、
乾燥を経ても、優しい色味の青畳となります。
また、泥染することで、乾燥が均一に進み、
い草の爽やかな香りが醸成されます。
乾燥の温度や時間がほんの少し変わるだけで、
仕上がりが全く違う。
今年の、この田んぼのい草は、こういう風に料理しよう!
自然と、頭に浮かび、早くやりたくてしょうがない様子。
天津さんは、自宅前の一番青々とした植木を指差して、
今度のい草は、あの葉の色をめざしている。
もうすぐできそうだ。と満面の笑み。
い草を自由自在に操るマエストロは、
研究熱心で、向上心の塊。
もう一人の、レジェンド天津氏は、天才肌のい草職人。
沢山のお話を聞かせていただき、誠に有難うございました。